風のゆくえ
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歌のはなし |
曲名 |
公表作品 |
作詞者 |
作曲者 |
081 |
風のゆくえ |
地下書店
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糸田ともよ |
及川恒平 |
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@ G Em Am C
風が もっ と 強まれ ば
Em Bm C G
胸の 景 色 はがれて 飛 ぶ
C Am Bm Em
夢に かたむ く 春の 夕暮 れ
C Am B7 Em D7
それを 誰に も 言えなかっ た
G Em Am C
はばたく の を やすんだ な ら
Em Bm C G ÷
燃えて しま う 鳥を 見かけ た
A G Em Am C
まぼろし を まぼろし と
Em Bm C G
思う 静け さ 激しさ よ
C Am Bm Em 人が かくれ た 街を 流れ る
C Am B7 Em D7
川の 中州 に 新しい 森
G Em Am C
傷つく ひま も なしに 滅ん だ
Em Bm C G ÷
その 名前 を 言えない け ど
B G Em Am C
風が なに か つれて きて も
Em Bm C G
ぬくもり さ え 悲しい 祭 り
C Am Bm Em
食べられ な い 木の実も ある と
C Am B7 Em D7
あのとき 誰 か つぶや い て た
G Em Am C
天に 吸われ る 花びら の よう に
Em Bm C G
胸の 景 色 はがれて 下さ い
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この歌は、かつて一度だけ
こんな歌い方でいいんだろうなと思えることがあった。
おととしのギャラリー門馬で、数回録音したうちの一つだった。
そうではあったけれど、たったひとつのそれは結局捨てた。
録音盤に選ばれたテイクは、それ以前にも、そしてそれ以降にも、
これを歌うたびにありつづける、迷いやゆがみを含んだものである。
わざわざいうのもなんだけど、
音楽屋は、自分の演奏できる範囲内での最善を尽くそうとする。
曲想を練り、それに向かって練習なり訓練なりして、
ひとまえで披露する以前に、おおよその結果は予想できる。
ところが、じつのところ、自分の予想内でのパフォーマンスでは、
ほんとうにはしあわせになれない。
僕らがしあわせになれるのは、予想外のできごとをふくんだときだ。
このへんの事情は、おのおのの音楽観に基づいたもので
完璧に予定を立て、完璧に実行するのだ、というひともいるのは、
承知はしている。
だから雛型ではないし、こんな考えもあるという程度のことだ。
つまり、予想外とは、予想以上とは限らないのだ。
歌っていて、あるいはあとで録音を聞いて、
違和感を覚えるような場合がしばしばある。
なにかが不足しているような気がするケースも多い。
たいていは、そのとおり、つかいものにならない。
あるいは、
楽屋で落ち込むようなできというのがほとんどだけど、
ごくたまに、
自分のじつりょく以上の表現が、できているのではないかと、
思えるときがある。
いやいや、実力以上ではない。
実力以外だ、失礼。
つまり、
日々降りてくることのない神様(うさぎも)を待っているようなものだ。
「まちぼうけ」の主人公か、
ウラジミールやエストラゴンみたいなものだ。
もっとも、神様を見かけたこともないので、
もし通り過ぎても気がつかないかもしれないのだが。
喜劇か、いや悲劇か。
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糸田ともよの歌集「水の列車」から、このSONGは作られた。
どのように歌詞になっていったか、たどっていただけたらと思う。
文字上では、完全に改悪だろう。
それはみとめる。
だから、
コンサートなりCD「地下書店」を聴かれるなりしてほしい。
音としての言葉と、文字としての言葉の間には、溝がある。
越えることに、それほど意味のない部分もある。
棲み分けが必要なところもあるだろう。
しかし、
越えたらおもしろいと思えるものもまた多くあると、僕は考えている。
今回、糸田ともよとのコラボレーションは、そんな作業のひとつだ。
風景とともに剥がれて飛ぶ車窓 天に吸われる花びらのごと
(水の列車、より)
風がもっと 強まれば
胸の景色 はがれて飛ぶ
死の夢へ傾ぐからだをたてなおす尾ひれの波にゆられる夕ぐれ
(水の列車、より)
夢にかたむく 春の夕暮れ
それを誰にも 言えなかった
己が身を冷ます羽撃き 捕らわれて羽ばたき休めば即炎上す
(水の列車、より)
はばたくのを やすんだなら
燃えてしまう 鳥を見かけた
まぼろしを まぼろしと
思う静けさ 激しさよ
かたくななこぶしの雲のほぐれゆき河の中州にあたらしき森
(水の列車、より)
人がかくれた 街を流れる
川の中州に 新しい森
傷つくひまもなしに滅んだ
その名前を 言えないけど
ぬくもりは哀しき祭り地吹雪の白馬撃たれて舞い狂う嶺
(水の列車、より)
風がなにか つれてきても
ぬくもりさえ 悲しい祭り
言の葉の繊維の残る舌先へ食べられないかもしれない木の実
(水の列車、より)
食べられない 木の実もあると
あのとき誰か つぶやいて た
風景とともに剥がれて飛ぶ車窓 天に吸われる花びらのごと
(水の列車、より)
天に吸われる 花びらのように
胸の景色 はがれて下さい
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