薬箱

歌のはなし 曲名 公表作品 作詞 作曲
074 薬箱 未発表
糸田ともよ 及川恒平
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C          Am           Dm7/G7     ÷
 森のにおいの   森のにおいの  薬 箱

  Dm7 /Em   G7/ C   
しずかに ふたが あきました

F        Am           F           Am
白い 包帯  ゆれゆれ のぼり   つる草みたいに  巻きまし た

 C△7  G    Dm7   G7    Dm7/     G7       C 
冷たい夜 を  束ねて  は    つる草みたい に 巻きまし た


C          Am           Dm7/G7     ÷
森のにおいの   森のにおいの  薬 箱

  Dm7 /Em   G7/ C   
しずかに ふたが あきました

F         Am        F          Am
ほんのり 甘い 粉 ぐすり    鱗粉 みたいに 舞いました

  C△7      G     Dm7   G7   Dm7/     G7        C 
こごえる さなぎ の   夢の   空    あわく  光って  舞いまし た


C          Am           Dm7/G7     ÷
森のにおいの   森のにおいの  薬 箱

  Dm7 /Em   G7/ C   
しずかに ふたが あきました


  「歌のはなし73」を読んだ糸田さんから、すぐにメールがとどいた。
たぶんSONGのための詩iが2篇。
そのうちのひとつがこの「薬箱」である。
 実はこの時点で、彼女は僕が8月27日、横浜・イギリス館で歌った
「歌う川」を歌のはなし73に掲載した歌詞としてみているだけで、
(「地下書店」も同時に歌った)録音を実際には聞いていない。

 そんな状況の中で、反応してくれたのだ。
おそらく、歌のはなし73の、「歌う川」というSONGとして一応完成作にいたる途中の、
僕が作ったもの(これも載せた)の言葉遣いを、意識してもらったようだ。
 ただし、「薬箱」にある風景は、まぎれもなく糸田ともよのものだ。

 この場はSONGにまつわる話題を書いているので、
メールとして送られてきた「薬箱」をそのまま以下、読んでいただいて、
SONGにとして、僕が手を入れさせてもらせったものと比較、説明してみたい。
薬箱  糸田ともよ 2005/9/18


森のにおいの薬箱
しずかに ふたが あきました

白い包帯 ゆれのぼり
つる草みたいに 巻きました
冷たい夜を 束ねては
つる草みたいに 巻きました

森のにおいの薬箱
しずかに ふたが あきました

ほんのり甘い 粉ぐすり
鱗粉みたいに 舞いました
こごえる さなぎの 夢の空
あわく光って 舞いました

森のにおいの薬箱
しずかに ふたが あきました
 冒頭にある歌詞カードの言葉は、コードとの関連で区切ってあるので、
普通に読むのが、しんどいことになっている。
それに、この歌はまだ誰にも知られていないのだから、
普通に読みやすく書けよ、といわれたら、ごめんなさいというしかない。
にもかかわらず、そうしていないのは、
これは歌詞カードなんだぞ、という、じこしゅちょーというやつです。
つまらないところで、ガンバッテイマス・・・。

 で、糸田さんの元の詩を読んでいただきたい。
 歌詞となった時点で、もとの言葉と違うのは、
森のにおいの、がくりかえされたことと、
ゆれのぼり、が、ゆれゆれのぼり、となったことのふたつ。

 別に、とりたてていう部分ではない気もするだろうけれど、そうでもない。

 繰り返しというわざは、SONGでは、文字としての詩以上に頻繁にあらわれる。
きっと、この「薬箱」での、元詩に付け加えられた、ふたつの繰り返しは、
SONGとしてでなければ、どうでもいい繰り返しだ。

 だから、歌詞カードだけ、これまで73コも、延々と載せてきたことは、
少なからず冷や汗ものなのだ。
 すこしでも、知られている歌をもっと知ってもらおうと、コード譜つきで、
載せていたころは、それなりに存在理由もあったけれど、
前回の「歌う川」を、聞いたことのある人の数は、数十名しかいない。
そして、今回の「薬箱」は、ついにゼロである。
 なんで無駄なことをしているのか、という疑問に、真っ向からおこたえしよう。

 今後この歌が世に広まったときの準備なのである。
“・・・・・・”
  曲づくりの課程をうだうだと。

この詩はかわいい、ものすごくかわいい。
しかし、なぜかあぶないのも隠せない。

 僕は曲を「赤い鳥」時代の童謡を意識して書き出したのは、いうまでもないが、
すぐに挫折した。
 第一聯は、薬箱が、少し怪しいものの、それらしい旋律はつく。
実際つけてみた。
しかし、第二聯、になると、いかん。
包帯が、空にむかって上っていくのですよ、コブラみたいに。
それも、夜自体を、すまきにして、ねじあげちゃったりしているのです。
 いったい、どんな風景なのか。
すくなくとも「赤い鳥」ではないと、ぼくでも思った。

 2コーラス目の第二聯も、どうしようもない。
この粉ぐすり、ほんとにのんでいいのだろうか。
もし、ほんとうにりんぷんだったとすれば、これはづぇったい、古代の蝶のものだ。
 つぎも、ものすごい。
この粉ぐすりが舞っているのは、こごえるさなぎの見ている夢の中なのだ。
こごえるさなぎ、ってやっぱり死んじゃうの?
それとも、さなぎって、あれって生きてるの?もともと・・・。

 しかも、この薬箱は、あろうことか、町で暮らす自室の枕元なんだからね。
解説してどうする・・・。

 しかし、それが、あ・く・の・で・す。
 何かを参考にすることも、ましてなぞることなどできない日々が始まった。
参考資料

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