機 織 歌 |
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岡本忠成のアニメーションは、彼がこの世を去ってから十幾年を経ても、 その輝きをなくしていない。 アニメーション制作の技術的進歩の度合は、相当のものだろうから、 奇跡的といってもいいのだろう。 超絶技巧とは、遠い位置でのんびり出来上がっている印象を受けるだろう。 つまり、絵と音のタイミングを合わせるような、今ではごく初歩的なものも、 当時は製作者の勘にたよるしかなかったらしいので、 コンピュータグラフィックを駆使したものを見慣れているひとには、 そう見えても不思議はない。 だが、この『虹に向って』という20分ほどの作品は、その製作日数が、 実は撮影だけでも数ヶ月を要した。 今なら数日の作業だろうか。 しかし、そのタイミングあわせのような、ここで初歩的と言ってしまったテクニックが、 あわせやすくなったということで、作品としての精度が、現在あがったのかというと、 そうもいえないと、僕はかんがえる。 |
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数日前、イギリス館で共演したギター、ウクレレ奏者の松宮幹彦と、 弦調律機(チューナー)の話をしていて、精密さが増してくると、 チューナーとしてはだんだん使いにくくなるということになった。 なぜならいつまでも、その機械は、正確たらんとして、 答えをなかなか出さなくならからなのだ。 これには、現場の人間として、非常に困る。 アコースティク楽器なんて、だいたいがいい加減なのだ。 だから、聞き手が気持ち悪くない程度にあっていれば、それ以上あわせたって、ムダダ。 そんなに気になるなら、楽器置いて、音叉鳴らしなさい。 この音のゆれが、岡本作品のたとえば絵と音楽のタイミング、 アニメーションに登場する人形のボサボサ感(ほかにいい表現ありそう)、 などと共通していると思う。 ところが、岡本さんがこの世で活躍した時代には、日常的には、 なるべく廃棄処分にしたい部分だったのだ。 つまり、僕らのようなアコースティック楽器を弾き、歌うタイプの音楽も同時に、 邪魔物扱い、または、時代遅れとかんじられだした時期でもある。 電気部品が電子部品に次々に置き換えられたのと、かさなる。 こういう僕も、多分電子レンジを購入したりもした。 自分の首をしめているとも気がつかずに。 |
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ところが、どうだろう。 この国の経済成長がアタマ打ちになった、前世紀末から今世紀にかけて、 どうやら少しそのアタマを冷やす必要が出てきたら、ちょっと情況が変ってきた。 人のもっている精度以上必要なケースばかりじゃないかも、と、 だいぶ不利だった側の発想が、やや失地回復してきたようなのだ。 限りない発展以外にはありえないなどと、一旦、とんでもない夢を見たあとだけに、 その意味は小さくない。 ともかく、岡本作品を、どれでもいいからごらんになっていただきたい。 僕も音楽で数回、かかわらせてもらった。 現在、ビデオとして市販されている岡本作品ももあるので。 しかし、そんな方法では、づぇったいに再現が不可能なものもある。 『十二月の唄』『お淋し谷の別れ歌』という六文銭の生唄にあわせて、 数面のスクリーンに別々の映像を映し出すという、いわゆる、 マルチスクリーン方式によるライブがあった。 1970年ごろ、青山一丁目にある(あった?)草月会館でのことである。 うらやましがらせてどうする。 あっ、そうでもない・・・。 |
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ここから、やっと歌のはなし。 『機織歌』は、ヒロインがはたを織っているシーンに使われた主題歌的な歌のひとつだ。 僕がコンサートで歌うにしては、歌詞の色合いとしてむずかしいところもあるのだけれど、 全然歌わないのもさびしくて、今回(2005/3/6)イギリス館では歌った。 まあ、歌えば歌えるのかなと、思ったけれど。 この歌詞の各パートの はぁ、からりことんとん、からりことん、 は、僕があとから構成しなおしたものなので、 たしか、原作はこうではない。 この作品を作るとき、岡本さんから渡された資料は、 『虹に向って』のテーマ曲は、彼の作詞によるが、 ほかは、文庫本ほどの大きさの書物にのっているものを渡された記憶がある。 『虹に向って』はわりあいとどこおりなく書けたものの、 『機織歌』ほか、はちょっと苦労した。 |
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僕の歌の考え方としては、歌詞と譜面は、その段階でテキストにすぎないのだ。 つまり、そのときの気分を、いかに表現しやすいかが、選択の対象になる。 別に性別や、年代にとらわれているつもりはないものの、 それでも、やはり選びやすいものと、そうでないものがある。 |
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