海の子守唄題字

曲名 公表作品 作詞者 作曲者
024   海の子守歌    『ドラゴンクエストV』挿入曲 『引き潮』    及川恒平    すぎやまこういち 

海のように祈ってほしい
あわせた手がはれやかに汗ばむほど 

海のように忘れてほしい
口笛吹く少年と見まごうほど


ほら 
もとよりそこにあるやすらぎ
まだ 気づかなくても
そのはるかなまなざしの先には
海  
はじまりの海       


海のように信じてほしい
握った手がいつになく無口なほど

海のように歌ってほしい
時計のない休日の日暮れまで


ほら
おのずとそこにあるしあわせ 
もし気づかなくても
そのかすかな手ざわりの中には
海  
はじまりの海

 テレビゲーム機が、まだファミコンがおもだった頃のことだ。
椙山さんの関係者からゲーム音楽に詞を書いてみないかとの誘いがあった。
 今思えば、それを待っていたかのように、
ぼくはドラゴンクエストという大流行のゲームをはじめたのだった。  
第4作目が発表されたころだったと思う。

  第5作『天空の花嫁』のエンディグテーマ『結婚ワルツ』を歌にして
ルーラというデュオが歌うことになっていた。
それを含め数曲に詞を書いた訳だが、
『海の子守歌』はぼくがシリーズで一番好きな3作目に登場する曲だ。
そしてぼく自身がリクエストしてこの歌をかかせてもらったのだ。
 器楽曲を歌にするということは、思わぬ壁がある。
音の高低の変化も歌用にはできていない。
ということは、それに載せる言葉も不自然になりやすい。
横の流れも、不意にシロタマ、つまり二分音符などの連続するところが出てきたりもする。
この一音に日本語の一音節を丁寧にのせていくと、冗漫な歌にしかならないことが多い。
 そういうシンドさはあったものの、
ドラゴンクエストの音楽を歌にするという誘惑にはあがらいがたいものがあった。
楽しい仕事だった。
 
 その上のちに、ぼく自身のフォークカブァCDに『特別参加』してもらった。
実は、それまでたびたびこの歌をぼくも人前で歌っていたのだが、
モト器楽曲は歌いにくいというかってな理由で、
ほぼ原曲の形をとどめないものにして披露していた。
だから作曲者の椙山さんの前で歌ったことはない!
しかし、記録にとどめるとなるとそうもいかず、譜面を前に直立不動で録音したのだった。
 歌詞の内容としては、海の持つ多様な表情が言い表せたらと思った。
歌としては、過去のオーソドックスなイメージに頼った方が伝わりやすいことが多い。
けっこうすばやい時間の流れの中で伝えるのが歌だから、当たり前と言えば当たり前だ。
イッパツ勝負の流行歌の世界では必須条件ともいえる。
作詞家たちは、どこかで独自性も発揮しなければならず、今日も苦労しているのだろう。
 
 ぼくの作ってきた歌は、流行歌としては、その意味で失格だ。
自信がある。
独自性とオーソドクスの選択を迫られる局面で、気が付くと前の方を選んでいたからね。

 ここでお願い。
この歌も、是非一度ではなく、何度か聴いてほしいのだ。
そのうち、アジというやつが出てくるかもしれないのだ。
しかし、出なかった場合。単なる時間の無駄ということか。
こんなことにつきあってくれる人は、きっと少ない…


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