papaの独り言 001

『歌追い人』を観て想うこと

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 映画の要素を大雑把に分ければ、ストーリーと映像と音楽になるように思います。
 これが三位一体となってテーマを紡ぎだすのです。
 だから、ひとつの要素だけ抜き出して、
たとえば「音楽・が良い」という感想は、製作者にとって必ずしも誉め言葉になりません。 

 「音楽は…」とか
 「音楽も…」

と言い換えれば、少しはニュアンスが違ってくるかも知れませんが。
 理性は「三位一体で評価せよ」と言っています。
が、感情は「何かひとつ抜きん出ていれば良い」と反論しています。


 『歌追い人』という映画を観ました。

 テーマがいいのです。
 ……20世紀初頭のアメリカ。
 女性民謡研究家である主人公は学内での出世争いに嫌気がさし、
妹のいるアパラチア山中の入植地に身を寄せる。
 そこで200年以上前のアイリッシュ伝承歌に出会い、蒐集・採譜を始める。
 自分たちの何でもない歌に異様な関心を示す主人公を奇異な眼で見ていた村人たちも、
やがて彼女を理解し、協力的になっていくのだが、さて、……というのが大まかなストーリーです。

 ただ、私個人の好みで言えば、ストーリーが散逸で、総花的です。
役者の芝居を信頼していないのか、カット割りの多用が目立ちます。
 それが効果的な部分もありますが、
1シーン1カットのような「長回し」がこの映画には似合うという気がします。
 でも、フォーク好きの友人に薦めています。
 観てほしいと思います。   
 
 アメリカでの民謡、つまりフォーク・ソングの成り立ちを知るには佳品だからて゜す。
この映画、テーマがいいのです。


 『バーバラ・アレン』という歌が、キー・ワード(ソング?)です。
エンディングを含め3回登場しますが、孤児ディレイディスの歌が最大のポイントです。

 「どこで教わったの」と尋ねる主人公にディレイディスが答える。

 「おばあちゃん」。

 「おばあちゃんはアイルランドの人?」

 「ううん、死ぬまで山を降りなかった……。
でもね、おばあちゃんのママはアイルランドから来たんだって」。

 もう、付け焼刃のフォーク・ファンではかないません。
血です。
伝統の力の前には、頭だけで分かったつもりになっている私ごときでは、とてもかないません。

 親子4代、いや、おばあちゃんのママは誰から教わったのか、を考えれば
、それはもうご先祖様の世界だ。
 それだけの時代を引き継がれてきた歌なのです。
 そして、孤児となったディレイディスを歌とともに、見守り育てる山の人々……。
 そうした部分をもっと深く描いてくれたら、もしかしたら、この映画、
私の好きな映画のベスト5くらいにはランク・インしたかもしれません。



 そういえば、劇中にフラット・フッティングと呼ばれるダンスの場面があります。
 躍動感、そして、村人たちの変化の表現として、
カット割りが効果的に使われているシーンなのですが……

 先日の『六文銭のように』のライブでの、タップダンスを彷彿とさせるステップです。
 ダンスのことは分かりませんが、もしかしたら、原型なのかも知れません。
 そして、同時に思うのです

 あのダンスを誉めることが即ち、ライブの評価につながるものではないにせよ、
もし、それを知っていてやったのだ、としたら・・・。
 買いかぶりでしようか。

 昔のように、ただの流行、一種の風俗で終わってしまうには、あまりにも悔しいと思うのです。

  
                                                  papa


歌追い人
『Song catcher』

2000年/
アメリカ映画/
ヴィスタサイズ/
ドルビーデジタル/
上映時間1時間49分/
字幕翻訳:松浦美奈/
配給:松竹



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