夢眠のフォーク畑 007
ミニFM局
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本稿6作目にして、ようやく日本のフォークがでてきたが、
で、そっちのファンが多いであろうことは百も承知の上で、
まだ、アメリカのことを書く。

話は日本。
ボクの住む街に小さな放送局がある。
通称、FMブルー湘南。
市内でさえ山陰ビル陰では選局できないような小出力のコミュニティ放送局だ。
災害時には緊急放送しますなんて言っちゃいるが、
果たして避難所で受信できるかどうか、不安……。

週に1回、20分くらいの小さなコーナーがあって、
題して「スーパー・フォーク・ソング・マニア」。
凄いだろ。
スーパーで、かつ、マニアだぞ。
「超民謡オタク」ってくらいなもんだ。
はーみんと称するパーソナリティが、
聴取者のリクエストやら彼女の選曲やらにコメントを挟んで、
毎週3曲、いわゆるフォーク・ソングを流す。

始めた頃はいつまで続くかと妙な期待をしていたが、
蓼食う虫もなんとやらで2年半を超えた。
コーナーの現在のテーマ曲は『面影橋から』、その前は『プカプカ』だった。
どうだ、オタクだろ?
で、その宣伝をしようというわけじゃない。
宣伝したところで、おそらくあなたの街では聞けないもん。
ボクが言いたいのはアメリカのラジオ事情だ。

いくつかの大手を除けば、アメリカのラジオ局はこんな感じの、
それこそ自宅を改造して、家族だけで運営しているような局ばかりだ。
全米で何百もあるそうしたFM局はそれぞれに特化していて、
中には日がな一日、カントリーしかかけない局もある。
ほとんど有線放送の専門チャンネルだ。

選曲の基準は? と訊いたら「俺がこれだけ好きな曲だ。
嫌いなヤツがいるわけがない」。
この自信、この単純さ。さすがアメリカ! 肉ばっか喰ってるガサツな……。
いや、各種ジャンルを買い揃えるだけの予算はないから、
あるものだけで済ましてるってのが実情らしいけどね。
実はフォーク・リバイバルを支えた土壌がこうしたミニFM局の存在なのだ。
別にフォークに限らないけど、周波数を合わせればいつでも好みの音楽が流れてるって
うらやましいと思わないかい?

 しかも地域の各種情報やライブ情報なんかも聞けるんだぜ。
さらにはコーヒー・ハウスの存在もある。
喫茶店というより、わが国のライブ・ハウスに近い。
決して大きくはないけれど、近所で毎晩、好みのライブをやってりゃ、
そりゃ、同好の士も集まるだろさ。
新たなコミュニティの成立だ。

で、集まるうちに地元の大学のキャンパスでコンサートでも……となり、
各地のそうした動きがうねりとなって、ニューポート・フォーク・フェスティバルに結実する。
ピート・シーガーが中心となって、
ジョーン・バエズやボブ・ディランが世に出るきっかけとなったコンサートだ。
.各地にミニFM局が増えている。
地域に根付いた生活と音楽と情報と、
つまりは文化の新しい担い手として、ボクは密かに大きな期待をしているのだ。
がんばれ! ミニFM局
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