日々のこと25 
紙 相 撲
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知る限り、紙相撲に関した本は過去2冊あった。
この場合工作本は除外する。
 一冊は、トノサマのご子孫が主催した全国規模の紙相撲の実録をしたためたもの。
もう一冊は在京のあるまんが家を中心とした仲間内のやりとりを、これも実録として残したもの。
いずれも一昔以上も以前に発刊された本だ。

 世の流れから隔絶された、しかしひとつの世の中≠
独自に形成してすすめられる日々は、
読むものを驚かしめ、そしてあきれられるに足るものがある。
小皿ほどの大きさの土俵上での闘いの歴史はもちろんのこと、
力士を作成し所有している、親方と称する参加者たちの
かたくななまでに紙相撲を中心とした日常に、堕落した実世界のつけいる隙間はない。
ナイ。
書いてあったことかどうかは忘れたが、たとえばこういうことなのだ。
 飼い猫にもてあそばれて、命を落とした力士がいた。
熱戦に夢中になった親方のビールを全身に浴びて、引退を余儀なくされた力士もいた。
胸に去来する在りし日の勇姿に、やはりビールを飲まずにはいられない日もあっただろう。
 修行にも似たきびしさは、一般人を巻き込む事もあっただろう。
掌に載るほどだからといって、力士を「一匹」などと何気なく数えた見学者は、
それっきり出入り禁止となったこともあっただろう。
同じように、力士が燃えるとか濡れるとか、ワケノワカラン表現をした親類には、
それ以来、年賀状は出していない、ということもあっただろう。
ダロウッテ…
ちょっと冷静になっていいですか。
 『紙相撲』ってのは、趣味とはカクあらねばならないといっていいほどにピュアな、
言いかえれば、なんとツブシのきかない遊びなのか。
 よりによって『紙相撲』ですよ、まったく。
 釣りや狩猟なら、非常事態ではこの上ない力を発揮するだろう。
ゴルフやマージャンなら、出世に役だったりもする。
それぞれの分野では、専門誌が何冊かは定期的にでてもいる。
 『紙相撲』では、ない。キッパリ。

 そして決定的な一般的な趣味との差違がこれだ。
つまり、ご趣味は?と訊ねられて、言いよどむのは
犯罪レベルのそれをたしなんでいる者か、『紙相撲』愛好者に限られるということだ。
 ただし、実は『紙相撲』愛好者と犯罪者の違いは明白なのだ。
 あなたがこれはアヤシイとにらんだら、しつこく、ヤアヤアご趣味や如何?
とせまってみたらいい。
彼はおずおずと、しかしどこか自慢げに名刺なぞを差出したりするだろう。
肩書きにはこう書いてあるはずだ。

 『ドコソコ紙相撲協会理事長(自薦)』 
そうだ、彼とは二十年前の僕のことだ。ワルイカ。
 さて以後は『紙相撲』における技術論も展開していこう。
請う、ご期待!ソンナン、ダーレモオラヘンテ…

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