日々のこと14 |
演歌を語ろう その一 |
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今から三十年ほども前、当時ニッポン放送のオールナイトニッポン・ビバケンショーの主人公、 池田憲一さんに、ぼくはゲストとして招かれました。 池田さんのことは当時のチョー有名人ですから、今でもインターネットで検索すれば、 多くのことがわかるはずなので、ここでは特に紹介しません。 では、なぜその放送内容が手元にあるかというと、何か雑誌にその対談が転載され、 その切れ端が残っていたということなのです。 手元にあるのは連載された前半部分だけですが、ここに2回に分けて転・転載します。 |
正直いって深度の足りない話題に終始しています。 ただベルウッド・レコードの一歌手、一作家、 つまりはフォークシンガーとしての当時のぼくのスタンディング・ポジションは 推測できると思います。 ただスタンディング・ポジションというには、きじゃくそのものです。 ここには、フォークのそうめい期の当人でさえ混沌としている様子が出ています。 実際、あの「フォークブーム」っていったいなんだったのでしょうか。 ぼくは、なにはともあれ、ほぼその初期からフォークに関わったものとして、 あまりに真ん中あたりにいたせいか、どうも客観的な評価、判断はできそうにありません。 |
ただ、今読み返して感じるのは、この対談の骨子としても見え隠れしている、 既存の価値観との妥協をさぐる姿勢が、もしかしたら、 その後のニューミュージックの隆盛を生んだ原材料かもしれないということです。 それは、流行歌の世界からみれば、フォークはちょっと毛色のかわった品種でしかなかった ということを、意味してもいます。 ニューミュージックというお洒落なタグをつけて、こぎれいに包装された「もとフォーク」は、 しかし、やがてその後、元祖・流行歌をおびやかす、大奔流となっていきます。 前おきが長くなってしまいました。 では、三十年前のある日の深夜ラジオに耳をかたむけてください。 |
☆野崎参りは 屋形船で 参ろう… 「野崎小唄」 東海林太郎 が流れる。 池田/ 最初にかかった歌が、東海林太郎さんの「野崎小唄」なので、 今日は大ナツメロ特集になるんじゃなかろうか、と思う人が多いでしょう。 この番組のゲストに呼ぶ人に初対面というのは少ないんです。 この方の仕事ぶりについては、新歌謡派のチャンピオンとして、 尊敬もし、またファンでもあるんですが、実はお会いするのは今日が初めて。 容赦せずに、ちょっと趣向を変えて、もしかしたら大喧嘩になるんじゃないかというつもりで、 ひとつ楽にやっていきたいと思います。この方です。 及川/ よろしく。及川恒平です。 池田/ まず、及川くん、あなたっていうと、この歌を流さないわけにいかない。 「面影橋から」聞いていただいて 、それから始めましょう。 ☆面影橋から 天満橋 天満橋から 日影橋… 「面影橋から」及川+六文銭 が流れる。 池田/ 及川恒平さんというと、ふつうここでは、どうなってこうなったか聞くんですが、 今日は一切聴きません。と言うのは今日話したいのは…実はチャンスを狙っていたのです。 及川/ そうですか。 池田/ どういうのか、 水原弘も江利チエミもこの「面影橋」を歌っているでしょう。 いろんな人の歌をずっと聞いて、それから今日あなたに会うっていうんで、 昨日から今日にかけて及川恒平の歌を繰り返し繰り返し聴いてみたんです。 ぼくは、あなたを新歌謡曲派というでしょう、 この意味もよくわかんないんですけど 、ご自分で言い出したわけではないんでしょう。 これもコマーシャリズムのひとつの… 及川/ ええ。 池田/ あのね、かといってフォークソングと規定してしまっていいのか、と思うんですよ。 及川/ ぼくも、フォークソングって呼ばれると、フォーク・シンガーの方たちに悪いような気がするし、 非常に中途半端なんですね。 池田/ で、まあ、新歌謡曲派っていうのは、非常にうまい言い方だと思うんですが。 演歌が意外に好きなんですって?いわゆる演歌が。 及川/ 意外っていうんじゃなくって、ぼくの考え方の中心にあるって気がするんです。 演歌のなんか人情が。 池田/ これは意外なことを聞くなァ。 そういうものにやっぱり共感を持ちますか。 及川/ ウーン、すごく反発を感じることもあるんですね、そういうドロッとした日本的なものに。 でも、思わず知ずそれになってしまっていることがありますね。 古いんでしょうか、ぼくは。 池田/ 一番その、わかるんだな、反感を持ちつつ、ふっと振りかえってみると、 自分の中にそういうものが生きていたということ。 それは自分の環境にもよるのかしら。 及川/ そうですね。 やっぱり、ぼくは東京で生まれ育ったわけではないし、 (日々のこと15につづく) |
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