現代短歌研究 第三集

 
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特集

今秋、札幌でお目にかかった田中綾さんが、
現代短歌研究会の機関誌、第三集を送ってくださった。
彼女自身も講演会発表論文をのせている。
とりあげられた文学作品のごく一部ではあるが読んだつもり、でいる僕でも、
この論文が実にていねいな仕事であるのがわかる。
ごめんね、もうちょっとは勉強するね、と、まず言いたくなってくる。

横浜の朝日カルチャーセンターで数ヶ月に一度、短歌の朗読会がある。
数年前から、ときどき聞かせていただいている。
聞く、というより、時に観るといった趣さえある楽しい会である。
そこて、主催者の岡井隆さんはじめ、石井辰彦さん、穂村弘さん、
そしてその時々ゲスト歌人、詩人が趣向を凝らせた朗読を聞かせてくれる。
11月27日(04年)もあるのだが、
僕は長野の大町に“出張中”なので、残念ながら行けない。

穂村さんのご本は、数年前立ち読みで出会ってから、
書店にありそうなものはほとんど手に取っている。
なかなか『読んだ』と言うには勇気のいる作品群である。
ただし、眺めながらしょっちゅう大笑いしているのだが。

その穂村さんが、紹介本の中にも登場している。
短歌作品も収録されていて、やっぱり僕は彼の作品の一首目で、
笑いをこらえられなかったのだ。
しかし、この号の眼目のひとつは公開討論会の採録だろう。

『前衛』というものが、短歌世界にかかわる方には、
づぇったいに避けては通れない主題であるのがわかる。
『前衛』といえば、紅白歌合戦の小林幸子の衣装でしょ。
あのスサマジイ衣装を着て歌う彼女の表情は、
前衛を担う気概に満ち満ちたものです、などと、口がさけても言えない。

この特集を読んで『前衛』という観念のもつ重さが、
短歌の中では、想像以上であることを知った。
どう取り組んでも、明快な(不明快、未明快だとしても)回答など、
簡単にはありそうもない場所で、手探りしている歌人たちの姿があり、
さっきの発言は取り消しマス。

その討論会の場で、けっこう攻撃を受けている穂村さんであるのだが、
実際の時間経過と編集されたものを読むのとでは、違いもあるのだろうけれど、
発言していない部分での存在感は、参加者の中できわだっている。
エンターテイナーの素質充分とみる。

多くの言葉の分野で朗読、リーディングの集いが増えているという。
今年は僕も詩人の萩原健次郎さんとライブを一緒させてもらったけれど、
来年も弾き語りフォークとはちがう分野の方々のものを聞いたり、
一緒にステージにたったりしてみたい。