夢眠のフォーク畑 017
ディランといえば・・・の1
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 ディランといえば・・・
ディランU(セカンド)だ。(・・・ン? このパターン、繰り返し使えるぞ)
知る人ぞ知る、けれど、
知らない人はまったく知らないであろう、ちょいとマニアックなグループだ。
そして、知った人はかなりのめりこむグループだった。

就職して初めての社員旅行の旅館の一室。
酔っ払った上司が絡んできた。
「お前もなんか歌え」。
カラオケのない部屋だから安心してたのにィ。
が、しかし、そこは温厚かつ穏健なるボクのことだから、その言葉に従って歌い始めた。

♪俺のあんこはタバコが好きで〜

とりあえず一番だけでやめたのだが、「続けろ」と言われた。
ボクに向けられた最初で、おそらく最後のアンコールだ。

♪アンタとあたいの死ねるとき判るまで〜

歌い終わったら、上司が黙って握手を求めてきた。
彼の目が赤かったのは、たぶん酔いのせいだと思うのだけれど…。

俳優の原田芳雄とか桃井かおりとか、
ま、かなり個性的な面々も吹き込んでいるはずだ。
桑田佳佑の選んだ「21世紀に伝えたい歌」にも入っていたと思う.。
編集長もこの歌が好きだと聞いた。
そのとき、ボクは思った。
「タバコも吸わない奴に歌って欲しかないね」。
だが、歌詞を思い出してすぐに考え直した。

♪体に悪いからやめろって言っても、いつもプカプカプカ〜

普通に考えれば、非喫煙者の男がヘビー・スモーカーの彼女に言う言葉だ。
それも「煙いから」とか、「匂いがつくから」とかいうんじゃなくて、
体に悪いからという理由で、だ。
なんという優しさだ。そうだ、優しくなければ男じゃない!
でも、こうも考えられるんじゃないか。
つまり、男がタバコを咥えながら、煙たそうな目をして言うのだ。
「俺なんかもういつ死んでもいいんだけどさ、お前にだけは長生きしてほしいんだ」。
口先だけでなくそう言えたらいいな、と思うけれど、
果たして先に逝っちまうのと残されるのと、どっちが辛いだろう。
男らしいってわかるかい?
ディランUとは、大塚まさじ、永井よう、そしてメンバー的には微妙だけど、
西岡恭蔵の3人のグループ名だ。
デビュー間もなく恭蔵さんは抜けてしまうからなのだけれど、『プカプカ』は彼の手による。
作者名は書物によっては象狂象となっているが、彼の変名だ。
直接お話したことはなかったけれど、優しくて繊細な男だったんだろうな、と思う。
人間、見た目で判断しちゃいけない典型みたいな人だったんだろうな、と。

後年はカリプソとか南米音楽に凝っていたけど、今はどんな音楽を、
なんてふと思うことがある。
たぶん、KUROさんと……なぞとも考えたりするのだが、
その先は、寂しくなるから書かない。
書けない。
いつまでもこだわってはいられない。
きのうの思い出にさよならを告げるんだもの。

風邪をこじらせてしまった。
病気ってやつは長引くと心まで蝕んでくるみたいだ。
ま、無理は禁物とばかりに、ボクは今、両足を抱きかかえ、部屋に閉じこもっている。
春だ。誰かが、君の窓から出ておいで、とばかりに誘ってくれるんじゃないか、と。
                                                夢眠

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